結論
断熱等級5から6に上げるべきかどうかは、「追加費用」と「年間の光熱費削減額」から回収年数を計算すると判断しやすくなります。一般的には、10〜15年ほどで回収できる場合は、費用対効果が得られやすいと考えられます。
ここでご紹介する数値は、あくまで一般的な住宅を想定した“モデルケース”です。実際の住宅条件や地域によって変わる点はご理解ください。
なぜ数字で判断することが大切なのか
断熱性能は「なんとなく良さそう」で決めてしまうと、費用と効果のバランスがずれやすくなります。理由は次の3つです。
- 同じ等級でも追加費用に大きな幅がある
- 光熱費の削減額が家庭ごとに違う
- 性能向上のメリットは短期よりも長期で効きやすい
このため、感覚ではなく、数字を使った判断が安心です。
年間の光熱費削減額のイメージ(モデルケース)
ここでは、延床30坪・3〜4人家族・一般地域のケースを例として考えます。
- 年間の光熱費:24万円前後
- そのうち冷暖房が占める割合:およそ40%(9.6万円前後)
断熱性能を上げることで、冷暖房負荷が10〜30%減ると仮定すると、
- 約1万円/年(10%削減の場合)
- 約2万円/年(20%削減の場合)
- 約3万円/年(30%削減の場合)
という幅が想定できます。
このため、年間の光熱費削減額は
およそ2〜4万円程度
というレンジで考えておくと現実的です。
追加費用の目安(モデルケース)
断熱等級5から6へのアップグレード費用には幅がありますが、一般的な例では次のようなイメージです。
- 30万円前後
- 40万円前後
- 60万円前後
この費用には、断熱材の種類変更、サッシ性能の向上、施工手間などが含まれます。住宅会社によってはこれ以上になる場合もあります。
回収年数の計算方法
判断の軸にする計算式は、とてもシンプルです。
回収年数 = 追加費用 ÷ 年間光熱費削減額
以下はあくまで例としての計算です。
● ケースA(回収しやすい例)
- 追加費用:30万円
- 年間削減額:3万円/年
→ 回収年数:約10年
● ケースB(十分検討できる範囲)
- 追加費用:40万円
- 年間削減額:3万円/年
→ 回収年数:約13年
● ケースC(費用対効果が薄くなる例)
- 追加費用:60万円
- 年間削減額:2万円/年
→ 回収年数:約30年
地域による差について
断熱性能の効果は、住む地域によって大きく変わります。
- 寒冷地:暖房負荷が大きいため、効果が出やすい
- 温暖地:暖房負荷が小さいため、削減額が控えめになりやすい
- 内陸/沿岸:気温差や日射量の違いが影響する
同じ性能の家でも、地域によって回収年数が大きく変わることがあります。
断熱等級6は「誰にとっても必ず得」ではない
断熱等級6は性能としては優れていますが、費用対効果は住宅条件や追加費用によって変わります。
判断の流れは次の3ステップが参考になります。
- 追加費用(モデル:30〜60万円)を確認する
- 年間の光熱費削減額(モデル:2〜4万円/年)を想定する
- 回収年数を計算し、10〜15年以内なら前向きに検討する
20年以上かかる場合は、費用対効果としては慎重に考えた方が安心です。
まとめ
・断熱等級5→6の判断は、回収年数で考えると分かりやすい
・ここで示した数値はすべてモデルケースで、条件により変動する
・10〜15年以内で回収できる場合は費用対効果が得られやすい
・20年以上かかる場合は、性能アップより他の部分に予算を回す選択肢もある
断熱性能は長く住むほど効果が蓄積される部分です。
数字を使って検討することで、後悔しにくい選び方ができます。
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